食物アレルギーの食物負荷試験を導入しました。再診の患者様が対象です。火曜日、水曜日、金曜日の朝9時ごろから開始します。
食品と頓服薬を持参いただき、摂取後経過を観察して帰宅していただきます。
乳幼児に多い「食物アレルギー」とは
乳幼児は、消化吸収機能や各器官の発達が未熟なため、たんぱく質を十分に分解できません。免疫力が不十分であるこのような時期は、たんぱく質が含まれた食物を摂取した後に、アレルギー症状をおこすことがあります。
食物アレルギーは乳幼児期に多く見られますが、年齢を重ねるにつれて治ってくることが多いです。
ただし、重度のアレルギーの場合は成長段階でも改善しないことがあります。一人ひとり、何をいつから、どれくらい食べられるようになるかは個人差があるため、ゆっくりと見守ってあげる必要があります。
食物アレルギーの症状とタイプ
食物アレルギーによって現れる症状
皮膚
- じんましん
- かゆみが出る
- 赤くなる
- 唇や舌、口の中が腫れる
呼吸器
- 咳
- 呼吸困難
消化器
- 腹痛
- 嘔吐
全身
- 血圧の低下
- アナフィラキシー
- 元気がなくなる
- ぐったりとする
- 失禁
精神状態
- 不安
- 意識が朦朧とする
危険な即時型反応
- 蕁麻疹
- 咳
- ぜんそく
- 気管支ぜんそく発作
- 腹痛、嘔吐・下痢
- 鼻炎
- アナフィラキシーショック(血圧低下、意識消失を伴う)
緊急時に適切な対応ができるよう、普段から手順を確認しておくことが大切です。
タイプ別症状の現れ方
食物を摂取してから、アレルギー症状が出るまでの時間帯は様々で、大きく3つのタイプ分けられます。
即時型
食物を摂取してから15~30分後に症状が出現し、アナフィラキシー反応が起きる場合があります。
遅発型
6~8時間後に症状が現れることが多く、すぐに症状が出ないことから原因に気づきにくいため、正確な診断が必要です。
遅延型
食物を摂取してから1~2日後に症状が現れます。精神神経症状にも影響が出ることがあり、病態を知らなければ判断が困難です。
食物アレルギーの原因と割合
アレルギーを引き起こす原因
食物アレルギーは特定の食べ物を摂取したときに、体の免疫システムが過剰に反応することで起こります。食べ物に含まれるタンパク質が主な原因とされています。
新規発症の原因となる食べ物(割合)
年齢別に見るアレルギー症状をきたす主な食べ物には下記のような割合がみられます。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
---|---|---|---|---|---|
0歳 | 鶏卵 (57.6%) |
乳製品 (24.3%) |
小麦 (12.7%) |
― | ― |
1歳 | 鶏卵 (39.1%) |
魚卵 (12.9%) |
乳製品 (10.1%) |
ピーナッツ (7.9%) |
果物 (6.0%) |
2~3歳 | 魚卵 (20.2%) |
鶏卵 (13.9%) |
ピーナッツ (11.6%) |
ナッツ類 (11.0%) |
果物 (8.7%) |
4~6歳 | 果物 (16.5%) |
鶏卵 (15.6%) |
ピーナッツ (11.0%) |
ソバ・魚卵 (9.2%) |
|
7~19歳 | 甲殻類 (17.1%) |
果物 (13.0%) |
鶏卵・小麦 (9.8%) |
ソバ (8.9%) |
|
20歳~ | 小麦 (38.0%) |
魚類 (13.0%) |
甲殻類 (10.0%) |
果物 (7.0%) |
― |
※食物アレルギー診療ガイドライン2021より作成
アレルギー検査の種類
アレルギー検査の種類には、「食物除去試験」や「食物負荷試験」などの診断の根拠となる検査と、補助的な検査となる「血液検査」や「皮膚テスト」があります。
食物除去試験
血液や皮膚テストから原因と考えられる食物を特定し、その食物を普段の食事から完全に使用せず1~2週間過ごします。その結果を元にアレルギー症状が改善したかどうかを調べる検査です。
食物負荷試験
原因と考えられる食物を実際に摂取することで、症状が出るかを調べる検査です。
再診の患者様が対象です。火曜日、水曜日、金曜日の朝9時ごろから開始します。
食品と頓服薬を持参いただき、摂取後経過を観察して帰宅していただきます。
※アナフィラキシーショックを起こす危険性がある場合や血液検査の結果によっては実施できないこともあります。
血液検査
血液検査によってIgEの量を調べることでアレルギーの有無を調べることができます。
皮膚テスト
皮膚にアレルギー物質が含まれるエキスをつけ、アレルギー反応を調べることができる検査です。アレルギー物質に対しての反応をすぐに判定することができます。
食物アレルギーの対応・治療方法
除去療法
原因となる食べ物を除去する治療法です。加工品に含まれていることもあるため、食品表示をしっかり確認する必要があります。除去食品に代わる食品を食べて、栄養バランスに配慮しながら行います。
誤食時のアレルギー症状への対応
原因食物を除去することに気を付けていても、どうしても誤食によるアレルギー症状のリスクは残ります。アレルギー症状が出現したときにどう対応するか、日ごろから確認しておく必要があります。アナフィラキシーのリスクがある患者さんにはエピペン®を携帯したほうがよいでしょう。
必要最低限の除去が重要
例えば卵アレルギーがあって、卵1個は食べられなくても1gなら食べられることが多いです。1gが食べられるだけでも多くの加工品が摂取可能となり、日常生活はだいぶ楽になります。さらに、普段から安全な量を食べ続けることで体をアレルゲンに「慣れさせていく」ことで耐性獲得が期待できます。
ただ、初めてアレルゲンを食べる、増量するのはリスクがあります。そのため、適宜食物負荷試験をしながら安全な量を見極めて、進めていきたいと考えています。
経口免疫療法
経口免疫療法とは原因となる食物を安全と考えられる量から摂取していき、徐々に摂取量を増やして体に慣れさせる療法です。
食物アレルギーの発症を予防するには
生まれて数ヶ月以内から、皮膚の状態を良く保つためのスキンケアを行ったり、食べ物を遅らせることなく取り入れて、体に慣れさせることで、食物アレルギーの発症の予防ができます。
適切なスキンケア方法や離乳食の進め方など、お困りの時にはご相談ください。